mtk13465003's diary

素敵な七十代を楽しく生きるために!

成績に関係ないテストの楽しさ

娘の明日香が小学生の頃、国語の授業の教材に「ひよこ」を使ったことがあった。
勿論教材を用意したのは担任の先生だったが、授業が終わってもひよこがあまりに元気だったので、先生は一つの実験を試みた。「ひよこがとても元気なので、希望者に育ててもらいたいと思う。でもお父さんお母さんが賛成しなくては駄目よ。明日までにおうちの許可が下りた人の中から、テストする人を選びましょう。」と投げかけたのだ。
翌日、手を挙げた明日香を見て、先生は「明日香ちゃんのうちはマンションでしょう。ほんとに大丈夫?」と念を押したのだが、明日香の決心は固かったようで、とうとうひよこを家に持ち帰った。後でこの話を先生から聞いて大笑いだった。
段ボールでひよこの住処を作り、「ぴよちゃんの家」と名づけた。明日香も良く世話をして、ひよこも段々鶏の形を成してきた。
ある時、夫がみかんの空き箱で鶏小屋らしきものを作って、「大分大きくなったから、ベランダに移そう。」と言いだした。私は「朝早くからコッコ、コッコ、コケコッコ―なんて鳴いたら近所迷惑にならないかなー。」と思ったのだが、お隣には知らせて置いて、卵を産んだらおすそ分けしましょうと解決策を考えて置いたので事なきを得た。
トサカの色も良く、元気な鶏が最初の一個目の卵を産んだ時は、家族みんなで大喜びをして、早速お隣へ届けた。そしてカレンダーに大きなシールを貼ってお祝いした。私はこの感激を手紙にしたためて娘に持たせた。
担任の先生から直ぐに返事がきた。「ひよこは4匹いましたが、明日香ちゃんの他は農家のお子さんに頼みました。でも広い庭はひよこにとって安全とはいえません。ひよこはまもなく猫と蛇にやられてしまいました。マンションの3階で育てられたぴよちゃんだけは天敵にやられることなく卵まで産んでくれたのですね。テストが成功したのは明日香ちゃんとお母さんの努力のたまものですね。有難うございました。」
この夏は記録的な暑さが続いた。ベランダにシーツを吊るしたりして太陽を遮ったが、ぴよちゃんも暑さ負けしたようで、卵を産む回数もどんどん減って来て、餌も残すようになってきた。
ある朝ぴよちゃんはぐったりと倒れていた。お線香をあげて段ボールに寝かせて、市が経営する動物の火葬場へお願いしてきた。明日香はそんなにがっかりした様子はなかった。むしろ達成感の方が強かったのかもしれない。