2014-01-30 私の住む町 今週のお題「僕の住む街・私の地元」 雪がちらつくこともない、街が雪景色に変わることもない、雪の積もった庭で雪だるまを作ったこともない、そんな私の街を、子供の頃は好きになれなかった。雪国の物語を読んだり、雪の中で遊ぶ子供たちの写真を見るにつけ、羨ましくてたまらなかった。 でも、いつの頃か雪の被害に苦しむ人々の生活を知るようになり、自分の町を見直すようになった。 雪が降らないということは、気候が暖かいということだ。屋根の雪下ろしや道路の雪かきなどの苦労がないということは、生活にゆとりが生まれることだ。雪遊びが地元ではできなくても、ちょっと足を延せば雪山で遊べる。そう考えた時、もっと地元の良さをいっぱい見つけようと思い直した。 すると周りの景色が一変した。東の賤機山から昇る朝日も、西の山に沈む夕日も美しいが、季節を写す山々、買い物に往復する春の土手の素晴らしさが心を満たした。 賤機山へ登れば、右手に我が町が一望でき、南には駿河湾の水平線がかすみ、左手には富士が山々を従えて堂々と座している。もう一度右手を見れば、間違えるはずもない我が家の屋根が小さく見える。山を下って百段の石段を下りれば、浅間神社の境内だ。 浅間神社は久能山東照宮と文化的価値は同等の建築物だが、徳川幕府に遠慮して価値が低く見られていると、浅間神社の宮司に聞いたことがあるが、文化的価値云々より私たちにこの上ない楽しい遊び場を提供してくれたことは事実で、小中時代の探検ごっこの思い出は数限りない。成長した私たちにデイトや出会いの場を与えてくれたのもこの神社だった。 この町にもどり、この町で就職し、この町で生活している今、この町の静かで平和で、何事もなかったようなゆるやかさが、たくさんの問題を抱えて苦しんでいる同じ日本の人々に申し訳なくさえ思う。