mtk13465003's diary

素敵な七十代を楽しく生きるために!

月のうさぎ

今週のお題秋の夜長は読書とブログ」    
中秋の名月を見入りながら、7,8年前マザースコーラスに夢中だった頃を思い、思わず口ずさんだ曲は「月のうさぎ」でした。
「今日はこの曲聴いてみて。」と言って先生が伴奏者に合図した曲、「あとで感想聞くからね。」と言う時には必ず私の所へくるので、少し緊張して聴いたのです。
森の中で、動物たちが遊んでいます。ゆるやかで、しかも跳ねるような曲想が続き、突然何かが起こって静まり返ったような感じから、一斉にみんなが動き出したような流れになり、突然ピアノの弦が切れるかと思えるような激しい音で、伴奏者の体も大きく揺れました。何かとんでもないようなことが起こり、やがて解決したのか、優しいやすらかな曲想に変わって静かに終わる、こんな感じの曲でした。
「月にはうさぎがいて、もちつきをしている。結婚式でもあるのだろうか。そんな話は聞いているでしょうが、どうして月にうさぎがいるのか、聞いた人はいないでしょう。それを解き明かす哀しくも美しい曲よ。あなた方にぴったりだと思うの。さあ、ソプラノから音符で。」
ソプラノ、メゾソプラノ、アルトと繰り返しているうちに、歌詞と曲想がピタリと合い、歌詞で歌いたくてたまらなくなる、「歌詞で歌ってみようか。」という先生の言葉を待っていた私たちは、気持ちを込めて歌いだす。ピアノの弦が切れそうになり、伴奏者の体が激しく揺れて来た時、先生の厳しい声が飛んで何度も何度もやり直すのです。森の中で遊んでいたキツネやタヌキや猿やウサギたちは、行き倒れになって死にそうな一人の老人を助けようと、火をおこし体を温めてやり、食べ物を探しに森の中を駆けまわる。キツネやタヌキや猿は食べ物を持って帰るが、うさぎは何も持たずに帰り、「私を焼いて食べてください。」と言って火の中に飛び込む。
ピアノが最も激しく鳴り、先生の声が最も厳しくなり、指揮棒が激しく指揮台を打つ、この場面でソプラノは最も高い声を大きく響かせ、メゾピアノもアルトもお腹の底からの声を響かせる、そしてデクレシェンドを効かせながら静かに消える。
死にそうな老人は神の姿にかわり、うさぎを抱き上げて月の世界に送ってやるという「月のうさぎ」の曲は終わる。先生は「このお話の元があると思うのよ。私も知らないのだけれど、誰か図書館で探してみてよ。」と言ってその日の練習を終えました。
私は先生との約束を果たそうと図書館で探しました。そしてやっと見つけました。「月のうさぎ」はタイの田舎の民話で、やはり語り継がれてきたものだったのです。一冊読み終わって、思いました。自分の命をも厭わない愛は動物の心にも存在するんだと。そしてそんな美しい愛はきっと報われるんだと。